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大規模修繕でかかった費用は減価償却できる? 考え方や基準、メリットなどについて解説

2024.09.30 (Mon) 更新

マンションやアパートなどの不動産を大規模修繕する際には、かかる費用についての税法上の取り扱いについて悩まれるという声もしばしば聞かれます。検討される際のご参考情報として、基本的な考え方などを解説しています。

 工事規模が大きくなり、かかる費用も高額となりがちな大規模修繕を実施する際には、「修繕費になる? 資本的支出として減価償却できる?」といったお悩みや、「どのような工事内容のほうがメリットが大きいか」という考えを持たれているというオーナー様の声もよく聞かれます。

本記事では大規模修繕における減価償却などについて、基本的な知識をまとめて解説しています。

※本記事で解説している内容は、一般的な税法上の基準・考え方を参考としたものです。例外となる場合もありますので、厳密な判断をおこなう際には、税理士や税務署へ正しい処理方法をご確認ください。

 

 大規模修繕は修繕費になる? 資本的支出になる?

所有している建物に大規模修繕をおこなうにあたって、かかる費用を減価償却するということを検討するにあたっては、まず税法上の「修繕費」と「資本的支出」について理解しておく必要があります。

修繕費とは

税金を計算するうえでの「修繕費」とは、会社が経営において必要となっている「有形固定資産」について、修理や改修をおこなった際にかかった費用のことを指します。有形固定資産にはマンションやビルなどの建物が含まれますが、あくまで売買で利益を得る目的の建物ではなく、自社が事業において使用することが主目的となっている建物であることが条件となります。

修繕費の対象となる「修理や改修」については、通常の経営に必要な機能維持、および原状回復などが該当します。

そのため、大規模修繕においてもその建物の機能維持や建築当初の機能への回復を目的におこなわれる工事にかかった費用については、修繕費として計上されるという考え方となります。具体的な工事内容の例としては、経年劣化を回復するための外壁の塗装や屋上の防水工事、床材の交換などが挙げられますが、この際に例えば明らかに建築当初以上の機能向上が果たされるような、高機能な塗装や部材を使用した場合には、後述する「資本的支出」にあたってしまう場合がありますので注意が必要です。

資本的支出とは

税金を計算するうえでの「資本的支出」には、固定資産の耐久性を高めたり、価値を増加させたりするためにおこなわれた支出が該当します。この資本的支出にあたった場合には、その費用は固定資産の取得原価に加算されることとなるため、「減価償却費」という扱いとなり、耐用年数にしたがって年々、その年の費用として計上していくこととなります。

大規模修繕においておこなわれる工事内容が、前述の修繕費に該当する「原状回復や機能維持」なのか、あるいは資本的支出として減価償却できる「価値を増加させた工事」に該当するのか、というのは判断が難しい部分もあります。

国税庁では、修繕費とならないもの(つまり資本的支出にあたるもの)の判定基準として、3つの例を示しています。

【修繕費とはならず、資本的支出にあたるものの例】

・建物の避難階段の新設など、物理的に「付け加えられた」部分の費用

・「用途変更」のための模様替え、改造や改装の費用

・部品や部材を現状より「品質や性能の高いもの」に取り替えた場合、通常交換より多くかかったぶんの費用

この基準に照らし合わせた場合、例えば外壁塗装をおこなう際に、単に経年劣化で剥がれてしまった塗装を従来と同程度の塗料で塗り替えた場合には修繕費にあたりますが、塗り替えを機に断熱効果が向上する高性能な塗料に変更した、というような場合には、その増えたぶんのコストについて資本的支出と判断される可能性がある、ということになります。

また、マンションや商業ビルなどでバリアフリーに対応するために車椅子スロープを新設したり、オール電化へ改築したりといった場合には明らかに「物理的に付け加えられたもの」「用途変更」などにあたりますので、資本的支出と判断される可能性が大変高いでしょう。

尚、この場合の大きな留意点として、かかった費用が20万円未満の場合には、例え新設や資産向上であっても修繕費のほうに計上しなければなりません。また、20万円以上かかったとしても約3年以内の短期的な周期でおこなわれる工事の場合には、やはり修繕費にあたるなど、細かな取り決めがあります。

参考:国税庁「修繕費とならないものの判定」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5402.htm

 

大規模修繕を資本的支出として減価償却する場合のメリット

大規模修繕でかかった費用を「資本的支出」として減価償却する場合の、建物のオーナーとしてのメリットとしては、「長期間にわたっての節税効果を得られる」という点があります。

例えば、年間家賃収入の総額が1,500万円のマンションで大規模修繕を実施し、工事費用に1,000万円かかったとしましょう。

その他の所得など細かな面は考慮せず単純計算すると、この費用が修繕費にあたった場合では、その年度の経費として1,000万円がまるごと計上され、所得税が57万円ほどとなり、税引き後の所得は443万円ほどとなります。

一方で資本的支出と認められた場合には、およそ47年ほどという長期間に渡って1,000万円を減価償却していくことになるため、約22万円ずつ減価償却するという計算となります。

ただし、この場合に「長期に渡る減価償却」をメリットとして捉えられるか、あるいは初年度に大きく節税効果があり税引き後の所得も増える修繕費のほうがメリットが大きいと感じられるかは、事業の運営状況や方針によっても異なってくるでしょう。

 

減価償却期間の考え方

大規模修繕でかかった費用が資本的支出にあたった場合、減価償却期間となる年数については建物の種類が関係します。

大規模修繕費用として資本的支出がおこなわれた際には、「新たな固定資産の取得」という考え方となり、基本的にその建物の種類自体における、財務省令で定められている耐用年数に応じた減価償却として計算されるためです。

例えば、鉄筋コンクリート造のマンションの場合には耐用年数は「47年」、木造アパートの場合の耐用年数は「22年」となります。

 

大規模修繕を修繕費として計上する場合のメリット

大規模修繕でかかった費用を「修繕費」として計上する場合の、建物のオーナーとしてのメリットとしては、前述の「資本的支出として減価償却する場合」でも例に挙げたとおり「修繕をおこなった事業年度で得られる大きな節税効果」があります。

この場合には、その年度で手元に残るお金が単純に多くなるため、事業資金として現金を多く残したい場合などには、大きなメリットとなるでしょう。

 

大規模修繕の費用が資本的支出・修繕費のどちらに該当するかは基準に照らし合わせてチェック!

本記事では、ここまで大規模修繕費用について「資本的支出」になる場合と「修繕費」になる場合の考え方や、得られる可能性のあるメリットなどを解説しましたが、あくまでどちらの区分として取り扱われるかは法律で定められた基準に照らし合わせてのこととなります。

例えば、「資本的支出のほうが長期的な運用をしやすいな」と感じたり、「修繕費として計上したほうがメリットが大きいな」という考えがあったとしても、希望によって柔軟に選べるという性質のものではありません。

確定申告の際には、国税庁が提示する基準を参照し、適切な申告をおこなうようにしましょう。

万が一、基準を反するような申告があって、例えば税金を減らすために意図的にいずれかに計上するような行為が認められた場合には、法令違反にあたってしまい会社法や法人税法に則った罰則が科せられてしまう可能性があります。状況が曖昧で判断に迷ってしまうような場合には、税理士や税務署へ相談し、判断を仰ぐことをおすすめします。

 

目的に合わせた大規模修繕をおこなうためには、ぜひ専門店へご相談ください

アパートやマンション、工場などの建物を大規模修繕する際の主目的はその不動産の原状回復、機能改善などが大きなところとなりますが、少なからず費用をかけて大規模修繕をおこなううえで「併せて節税効果や長期的な減価償却など、納税上のメリットも検討しておきたい」と考えられるオーナー様も多くいらっしゃるでしょう。

 

本記事で解説したとおり、かかる費用が「資本的支出」にあたるのか「修繕費」にあたるのかについては法令に照らし合わせることとなりますが、例えばあらかじめ税務署や税理士に確認したうえで、「このような結果となる工事をおこないたい」という希望が定まった場合には、ぜひその旨を修繕専門店へご相談ください。ご希望に沿うプランをご提案させていただきます。

 

 

 

ブログ監修

代表取締役

柏木 雅人MASATO KASHIWAGI

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