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マンションや工場などの大規模修繕ってどんな工事内容? 一般的な工事周期についても解説

2024.09.20 (Fri) 更新

アパートやマンションなどの建物で実施される大規模修繕では、状況に応じて様々な工事内容が選択されます。本記事では一般的な工事内容や、計画される工事周期などについて解説しています。

アパートやマンション、工場など建物を所有している方にとっては、定期的な大規模修繕で建物の劣化を防止することが大きな課題です。

そもそも大規模修繕とはどのような工事内容を指すのか、どの程度の周期でおこなうべきなのかなど気になっている方に向けて、本記事では基本的なポイントをまとめてご紹介しています。

 

そもそも大規模修繕ってどういう工事?

マンションやビルといった建物において、単なる修繕や補修工事などではなく「大規模修繕」と言う場合には、どのようなケースがあたるのかご存じでしょうか。

実は、建築基準法にて一定の定義がなされています。

建築基準法とは、日本国内において建築物の敷地や設備についての基準などが定められている日本の法律であり、この法律は「国民の生命・健康・財産の保護」が主旨となっています。

以下に、建築基準法における「大規模修繕」の定義を一部要約してご紹介します。

詳しくは掲載リンクより、当該法律をご参照ください。

 

建築基準法(第二条第十四号、および第十五号)「大規模修繕」の定義(要約)

・建物の主要構造部で、一種以上について過半部分に対する修繕

・建物の主要構造部で、一種以上について過半部分に対する模様替え

建物の主要部分で大がかりな修繕をおこなうと、ほぼ該当する

上記、定義の要約のうち「主要構造部」が何を指すかというと、建物のなかの壁や柱、床や梁、その他屋根や屋内階段部分といった、建物の根幹を成している部分であり、付加設備ではない部分のことをいいます。

一方で例えば間仕切りとなっている壁部分や間柱、揚げ床(二重床)やひさし、屋外階段などは定義上、主要構造部からは除外されています。

つまり、法律上で「主要構造部」と定義されている壁や床、屋根などのうち、一種類以上の部分について、その半分以上を修繕したり模様替えしたりする場合には、「大規模修繕」にあたる、という理解となります。

一般的に建物のオーナー様や管理会社様がイメージする「大規模な修繕」とほぼ内容が一致するかとは思いますが、建築基準法上の定義として再確認しておくとよいでしょう。

尚、この建築基準法における大規模修繕に該当するような工事をおこなう場合には、諸条件や時期により住宅金融支援機構などからの融資・支援を受けられる場合もあります。

参考:e-Gov 法令検索「建築基準法」

https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201

参考:国土交通省「参考 法律上の手続きと補助・融資等の制度」

https://www.mlit.go.jp/common/001064904.pdf

 

「修繕」と「改修」はどう違う?

建物に何かしらの工事をおこなう際には、「修繕」にあたる場合と「改修」にあたる場合があります。また、大規模修繕をおこなう際にも、「修繕と同時進行するかたちで改修までを実施する」というようなケースがあります。

この「修繕」と「改修」の違いについて、簡単に解説します。

 

「修繕」とは

建築から年月が経った建物や、その他なんらかの要因によって劣化部分がある建物、不具合が発生している建物などにおいて、設備や部材の交換や修理をおこなうことを「修繕」といいます。基本的に、これらの交換や修理は「もともとあった性能や機能を回復させる」という目的でおこなわれます。つまり、回復の度合いについてもその場しのぎの一時的なレベルではなく、あくまで「建築当時の水準まで戻す」ということが目指されます。

この修繕については建物において一定の年数ごとなど、長期計画のうえで定期的に実施されることが一般的であり、もしそうではなく局所的な劣化や不具合に対して都度おこなわれる対応の場合には、区別されて「補修」や「小修繕」などと表されることが多くなっています。

「改修」とは

もとからある性能や機能を維持するためにおこなわれる修繕に対して、「改修」は主に建物の改良・アップグレードに関する工事を指します。

例えばマンション、アパートなどの集合住宅や商業ビル、工場といった、「人」が利用する建物は、時代の変化、住み方や働き方の変化などによって、求められる設備や機能のほか、住みやすさや働きやすさの水準なども変化していきます。

そういったニーズに応えるため、建物のオーナー様が「よりよい、時代に合った建物」へ更新するという目的でおこなう工事が改修にあたります。

改修をおこなうと、建物は建築当時の初期性能よりもアップグレードされた機能や性能、居住性などを得ることができ、住民の満足度の向上につながったり、入居希望者が増えたりといった多くのメリットにもつながります。

 

状況ごとに変わる大規模修繕の内容

大規模修繕においては、その建物がどういう状態にあり、どういった修繕ニーズが生じているかによっておこなわれる工事内容が異なってきます。

場合によっては複数の工事内容を同時におこなう必要性もあるでしょう。以下では、代表的な状況ごとの具体的な工事内容例をご紹介します。

 

外壁や屋根の老朽化への対応

コンクリート部分のヒビ割れといった、建物の主要構造部において老朽化による不具合が生じている場合です。

コンクリートのヒビ割れに対しては、エポキシ樹脂や可とう性エポキシ樹脂を厚さ10cm程度で覆う(シールする)「シール工法」という方法が多くもちいられます。

また、あわせて防水性能を高め、当該部分の新たなヒビ割れ(ヒビの広がりなど)にも対応できるように、当該部分を一度ダイヤモンドカッターなどでU字型にカットしたうえで、そこにシーリング材を充てんする「Uカットシーリング工法」がとられる場合もあります。

 その他、老朽化の箇所や規模によって「ボンドシリンダー工法」や「HSS工法」など、様々な選択肢のなかから最適な手段が選ばれます。

モルタルやタイルの浮き・傷みへの対応

壁や床部分などでモルタルやタイルの浮きや傷みが生じている場合にも、状況に応じて様々な工法の選択肢があります。

例えば下地となるコンクリートの部分に欠損がみられる場合には、ヒビ割れの場合と同じくエポキシ樹脂を充填し、モルタルの浮き自体への対応としてはステンレスピンを併用した「ボンドピンニング工法」がとられます。タイル陶片が浮いていたり傷んでしまっている場合には、アンカーによって再固定する「MUS工法」がとられるほか、タイル自体を張替える場合も多くあります。

屋根の防水層の劣化への対応

建物の屋根や屋上部分の防水性能が落ちてしまっている場合には、原因によって様々な対応がとられます。

保護塗料が摩耗してしまっている場合には、新たな保護塗装をしなおします。

防水層を成すシートが摩耗・損傷している場合には新たな塩ビシートやゴムシートに貼り換えます。そのほか、もし伸縮目地の飛び出しが起こってしまっている場合には液体状のウレタン樹脂を充填するなど、現状で採用されている防水機能やその状況によって、最適な防水手段が選択されます。

 

大規模修繕が必要になる周期ってどのくらい?

アパートやマンション、ビルなどを新築して以降、果たしてどの程度の周期で大規模修繕が必要になるものでしょうか。

この点についてはもちろん建物がある環境や使われ方、気候の影響、そのほか外的要因にも左右され、時期や回数に一定の決まりを示すことはできません。

建物の目的や劣化状況に応じて所有者や各管理組合などが随時判断していくこととはなりますが、国土交通省では主にマンションについての大規模修繕に関係するガイドラインを公開していますので、ご参考までに概要をご紹介します。

 

 当ガイドラインでは、建物の快適な居住環境の確保、資産価値の維持や向上をはかるための修繕工事の重要性が示されており、標準様式を基にした長期的な修繕計画書を作成することが推奨されています。

計画期間については、「30年以上で、かつ大規模修繕工事が少なくとも2回含まれる期間」といった最低限の目安が提示されており、あわせて新築マンションの場合には推定される修繕工事項目ごとに建物の仕様や立地条件などを考慮しつつ設定、既存マンションの場合にはさらに建物や設備の劣化状況を随時調査・診断しながら設定というようにガイドされています。

 一般的に、アパートやマンション、ビルや工場などといった建物では1215年位の間隔で大規模修繕をおこなうよう計画し、さらに劣化個所や故障個所の発生に応じて判断していくということが多いでしょう。

下記リンク先のガイドラインもぜひ参考にしていただきつつ、建物ごとに最適な大規模修繕計画を立ててみてください。

 また、大規模修繕工事の際にはその時代にあわせた、耐久性や防汚効果が従来より優れた新技術・製品などをもちいることで修繕周期を延ばせる可能性もあります。長期計画時には、ぜひ修繕専門店へご相談ください。時期にあわせた最適なアドバイスをおこなわせていただきます。

 参考:国土交通省「長期修繕計画標準様式 / 長期修繕計画作成ガイドライン / 長期修繕計画作成ガイドラインコメント」

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf

 

大規模修繕工事の事例

最後に、建物の種類ごとの大規模修繕工事内容について、いくつかの工事事例やかかった日数などを簡単にご紹介します。

計画時や検討時、具体的なイメージを持っておきたい際などにぜひ、ひとつのご参考となさってください。

 

マンション大規模修繕の一例

・築30年、3階建てのマンション……建物全体の高圧洗浄、および塗装(外壁、廊下天井、エントランス天井や各戸の玄関ドアなど)、防水工事を実施。工事日数50日間

・築34年、5階建てのマンション……屋上防水改修工事(既存防水層の撤去、新規ウレタン防水、改修用の排水ドレン取付など)を実施。工事日数30日間

アパート大規模修繕の一例

・築古物件、新築以来一度も改修されていないアパート……塗装工事による外観のモダン化、および防水工事、左官工事や砂利敷工事などを実施。工事日数36日間

施設建物大規模修繕の一例

RC構造、3階建ての介護施設……既存防水層の撤去、下地清掃、新規ウレタン塗膜防水、改修用ドレン設置、配管架台の移動などを実施。工事日数30日間

 

大規模修繕で必要な工事内容については、ぜひプロにご相談を

アパートやマンション、ビルや工場などといった建物では定期的な大規模修繕が求められます。どのような内容の工事をおこなうべきかについては建物のどの部分がどのように劣化しているかによって異なり、また修繕をおこなうべき周期についても、建物がある環境や使われ方、天候など様々な点を踏まえ検討しておく必要があります。

大規模修繕を具体的に計画される際には、最適なプランを選択できるようぜひ修繕専門店へご相談ください。